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【健康コラム】「食物繊維で関節炎を防ぐ」

【健康コラム】「食物繊維で関節炎を防ぐ」

当クリニックにいらっしゃる方は様々な症状を抱えていらっしゃいますが、膝に痛みを訴える方が特に多い気がします。膝の痛みはそれそのものの痛みだけではなく、運動不足の原因になったり、趣味の活動を制限してしまったり、生活の質に大きな影響を与えます。加齢と共に始まる膝の痛みは、多くの場合、軟骨がすり減ることにより起こる炎症(osteoarthritis)が原因となっています。この膝関節炎は肥満と相関性があることが知られていますが、そのメカニズムはわからないことが多く、一般には肥満により関節にかかる圧力が増加し軟骨を損傷するため、と考えられてきました。しかしながら最新の研究では、全く違うメカニズムで軟骨の損傷が起きていることが明らかになってきています。



今回ご紹介するのは、アメリカ国立衛生研究所(NIH)のホームページ(サイトのリンクは最下段)で紹介された、「腸内の微生物環境をターゲットにした肥満体の関節炎に対する治療」(Zuscik MJ. Mooney RA. Gill SR. JCI Insight. 2018 April 19)という研究です。

これは様々な研究により既に明らかになっている事実ですが、脂肪分の高い食品を多く食べていると、体中の炎症を促進する微生物が腸内で爆発的に増加します。このため、それらの食品を好む肥満体の人は、慢性的に関節に炎症を起こしやすい状態であり、逆に言えば食事をコントロールすることで関節炎を治すことができるのではないか、というのがこの研究のコンセプトです。

実験には被験体として普通のマウスと肥満のマウス、食事コントロールとしてオリゴ糖とセルロースという2種類の食物繊維を使い、腸内の炎症を起こす微生物の量の変化と関節の炎症、組織変性の有無を調べました。3か月かけた実験の結果、肥満のマウスにオリゴ糖を与えると、他のグループと比較して腸内の特定のビフィズス菌の量が増え、かわりに炎症を起こす免疫細胞の活動が減少し、関節は炎症や組織の変性を起こすことがなくなったそうです。つまりこの実験により、膝に炎症が起きるのは、体の重さではなく食べ物によって悪化した腸内環境が原因である、という事が示唆されました。



いまだに議論が多い腸内環境の話題ですが、より多くの研究者が関心を集めている事は確かです。膝の関節炎にお悩みの方は、ダイエット(体重コントロール)よりもダイエット(食事)を見直す必要があるかもしれませんね。



suzuki


https://www.nih.gov/news-events/nih-research-matters/dietary-fiber-protects-obese-mice-arthritis